大阪地方裁判所 昭和44年(ワ)2693号 判決
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〔判決理由〕三 そこで、原告の予備的請求(損害賠償請求)について判断する。
1 予備的請求原因事実のうち、被告田中が酒類販売業を営むことは当事者間に争いがなく、右事実に、前示一の3の(1)で認定した各事実を総合して判断すると、同被告の被用者である訴外敏雄が偽造手を行使し原告をして手形貸付ないし手形割引名下に三回にわたり原告主張の金員を交付させ、原告に右金額と同額の損害を与えたことが認められる。そして、訴外敏雄の右行為が原告に対する不法行為を構成することはいうまでもなく、原告の右出捐が右不法行為と相当因果関係のある損害であることも明らかであるところ、訴外敏雄の右行為は、同人の前判示職務と密接に関連し、しかもその行為の外形からみて、使用者である被告田中の事業の範囲内に属するものと認められる。
従つて、右不法行為は被告田中の事業の執行につきなされたものということができるところ、次段の過失相殺をのぞき、他に格別の主張立証のない本件においては、同被告は、訴外敏雄の使用者として、右不法行為により原告の蒙つた前記一、3、(1)、ニ認定の割引金額相当の二、七六九、五〇〇円の損害を賠償すべき義務がある。
2 そこで進んで過失相殺の点につき判断するに、原告が訴外敏雄の不法行為によつて損害を蒙るについては、前示一の3の(1)のホ、ヘで認定したような諸事実があり、右事実を総合して判断すると、原告にも手形貸付ないし手形割引に当り、被告田中に対して手形裏書の真否を調査・照会すべきであつたのにこれを怠つた過失のあることは、前判示のとおりである。従つて、損害額の算定に当つては原告の右過失を斟酌すべく、本件に顕れた一切の事情にてらすと、被告田中が原告に対し賠償すべき損害額は、本来の要償額の一〇分の七強たる金一、七〇〇、〇〇〇円と認めるのが相当である。
3 よつて、被告田中に対する予備的請求は、右損害額金一、七〇〇、〇〇〇円とこれに対する前記各不法行為の日の後である昭和四五年四月三日から完済まで民法所定年五分の割合による遅延損害金の支払を求める限度で理由があり、その余は失当である。
(小谷卓男 辻忠雄 大東一雄)